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【論文掲載】現役バンカーによる提言

リスクマネーの提供と本源的な収益力改善策の支援体制の構築

目次

1.論文要旨
2.中堅・中小企業を取り巻く環境 ←New
(1) リーマンショック前後の日本経済
(2) 緊急保証制度
(3) 金融円滑化法の施行
(4) 現在及び今後の日本経済の見通し
3.中堅・中小企業の今後の課題と金融機関、金融行政の現状
(1) 中堅・中小企業の今後の課題
(2) 国内金融機関の置かれている現状
(3) 国内金融行政について
4.金融行政・金融機関による中堅・中小企業に対する成長・再生支援体制構築への提言
(1) リスクマネーとしてのメザニンファイナンスの提供
(2) 本源的な企業の収益力改善の為のM&A支援体制について
5.さいごに

1.はじめに

筆者は、田舎の中小企業経営者の長男として生まれ、家業を看ながら育ち、将来の経営者として才覚が磨けるかもしれないこと、他経営者との会話が可能で考え方や経営手法が看られるということを首肯して、バブル崩壊後に金融機関に就職した。巷で言われる失われた10年の中での法人関連取引の経験とそこで蓄積された問題意識、退職後、在学しているビジネススクールの授業やケーススタディを通じた知識や問題意識に基づいて、現在の中堅・中小企業の置かれている現状と今後の課題、こうした企業の支援の主体となる国内金融機関および金融行政の現状を踏まえ、中堅・中小企業の成長支援体制について、今回の論文をまとめた。当然乍、今回の論文は未熟な経験と拙い知識に基づくものではある。然しながら、以下に述べる不況の中で苦しむ中堅・中小企業の支援や成長を後押しできる体制の構築の一助になればと思い、取りまとめたものである。

2.中堅中小企業を取り巻く外部環境

(1) リーマンショック前後の日本経済
リーマンショック前の日本経済は、不良債権処理が終わった2006年から2008年までは、住宅をはじめとした不動産ミニバブルで、不動産業の参入障壁の低さから、いわゆる「カタカナ不動産会社」が新興した。例えばアーバンコーポレイション等の新興不動産会社は首都圏のマンション等を開発し、転売して転売益を得る手法が奏功して規模を拡大させた。然しながらその成長戦略は元々、過小資本であったことから相応の投資効率を得るために過大な有利子負債を活用したものであった。そこに08年9月にリーマンショックが行ったことから、その影響による国内の信用収縮により、資金調達がままならず、黒字倒産に追い込まれた。
こうしたリーマンショックの影響で特に北米、欧州での信用収縮と各国株式市場の収縮により、現地及び市場からの資金調達がままならず、グローバル企業は企業存続と危機予防の為、国内で間接金融により巨額の資金調達し、海外へ送金する等の緊急対応を行った。一方、中堅・中小企業はこうした欧米の景気悪化の影響を受けた外需の縮小による輸出減少や販売価格の下落の影響を受けたグローバル企業、大手企業の生産調整等により、売上、利益の減少という煽りを受けた。またこうした影響を受けた国内も非正規社員の解雇、正社員についても短時間労働等の雇用調整が行われ、中堅・中小企業の多くが下請け企業ということもあり、納入価格の下落圧力も強く国内景気の悪化が進行した。

(2) 緊急保証制度
上記のような環境下、麻生内閣は景気対策最優先の政権運営で日本経済の立て直しを目指した。08年度第1次補正、09年第2次補正予算、09年度予算、同第1次補正予算と半年余りで4回の経済対策を行った。
その中で中小企業の支援策として全国保証協会を通じた保証協会の保証付き融資の為に緊急保証枠を6兆円、その後30兆円と拡大。加えて政府系金融機関(日本政策金融公庫)の緊急資金枠3兆円を準備した。また中小企業を対象とした減税を行い資金繰りの支援を行った。
特に保証協会の緊急保証は、中小企業の資金繰り支援を行う為に対象業種に該当すれば、無担保で最大80,000千円、有担保で最大200,000千円を保証協会の100%保証で指定金融機関から従来の融資枠(従来は80%の保証協会の保証)と別枠で融資が受けられるものである。実際の保証承諾の実績は24.8兆円に達しており、中小企業の資金繰り安定化に一定の機能を果たしたといえる。
また今年2月には保証枠は36兆円に増枠され、景気対策緊急保証制度として対象業種を更に拡大して継続されている。

(3) 金融円滑化法の施行
政府、金融庁は上記の緊急保証枠の確保による資金繰り支援と同時に、金融検査マニュアルの改定を行った。これは中小企業宛融資の条件緩和債権の基準を緩和し、景気悪化の煽りを受けたことを主因に業績が低迷している場合を想定して、通常、自己査定上の「正常先」がどうかの判定に当たっては、「経営計画があり、概ね3年後に正常先になる」ことから「概ね5年後に正常先になる(但し、業績が概ね8割の水準で達成されている)」と恰好に緩和された。これは銀行の自己査定上、条件緩和債権に該当することで、開示債権に当たるとともに一定の引当を余儀なくされること、いわば不良債権として分類されることを防ぐことで、金融機関の貸し渋り、貸し剥がしを防ぐことを目的としている。
加えて、09年12月に金融円滑化法が施行された。これは、中小企業宛融資の返済猶予や条件変更の申し出に対し、金融機関は貸付条件変更に極力応じるという努力義務を課された。金融庁が発表した同法に基づく中小企業向け融資返済条件の緩和実績は、10年9月末時点で98万件、拒否率も2%台と低水準となっている。
上記緊急保証枠の創設後には倒産が減少しなかったものの、本件も合わせたに金融支援策が奏功し、企業倒産は09年9月以降、前年を下回っており、一定の効果が認められた。

(4) 現在及び今後の日本経済の見通し
今後の日本経済の見通しとしてシンクタンクによれば、①輸出の低迷が続くこと、②景気刺激策の反動減が現れること、③内需の回復力が脆弱にとどまること、の3点を背景に、「足踏み」状態が続く見通しで、輸出は、欧米諸国での景気刺激策の効果一巡、アジア諸国での生産調整の動き、円高による輸出競争力の低下などから、当面は一進一退の動きになることが予想される。またこれまで景気を下支えしてきた政府のエコポイント、エコ減税等の耐久財購入刺激策の効果もピークアウトした。国内民需も、回復感に乏しい状態が持続。とりわけ、企業部門の厳しさが長引く見通しがあると指摘している。結局、これまでの景気回復は、内外の政策効果に依存していたところが大部分で11年度は、上記の政府の耐久財購入刺激策などのプラス効果が剥落し、日本経済の脆弱さが浮き彫りになる局面が想定されるとしている。
また、日銀短観(業況判断DI)でも、先行きの不透明感や政府の内需支援策の終了等により中堅・中小企業の経営環境に対しては足許ならびに今後の見通しは厳しいと感じていることが読み取れる。
上記の通り、日本経済の回復が見込めない中、中小企業の経営環境については
引き続き厳しい環境が継続することが想定できる。