ターンアラウンドマネージャーの使命は、危機にある企業を緊急措置で生存させることだけにとどまらない。再生後の企業が持続的な成長を図れる基盤を構築することも使命である。さもなければ、再生策は一時的救命措置にとどまってしまいかねない。
企業再生政策を立案する際に、そうした成長源の一つとして、日本企業のグローバリゼーゼーションの影響を見逃すことはできない。実際、国内GDP 成長率が2%に過ぎない日本企業の業績が急速に回復しているのは、主に海外市場からの収益貢献のおかげである。しかし、現在のグローバリゼーションは、過去のグローバリゼーションとは異なる性格を持つことを、しっかりと理解しておくことも大事である。
グローバリゼーションの変質の第一は、「欧米市場中心主義」から、「中国・アジア市場重点化」への転換である。第二は、日本から海外市場へ「一方向」に流れる海外進出から、対外・対内投融資の「双方向」の流れが高まることである。まさに、日本・中国・アジアが連携した経済の創設は、未来の成長市場である。このことは、企業再生戦略にもいくつかのヒントを与えてくれる。もし再生企業が、工場のアジアシフトを急ぐ輸出型製造業の下請けであったら、国内にこだわった企業再生計画を立てても、将来は厳しいことを知るべきである。逆に、もし、幸いにも対象企業のアジア子会社が収益を上げているのであれば、それをスピンオフして上場し、その売却資金を本国の企業再生に活用する可能性は検討に値するだろう。また、日本市場への参入や日本の技術へのアクセスを熱望している中国・アジア企業から資本出資を受け入れ、共同でアジア事業を発展させていく道もあるだろう。
変質の第三は、「個別企業ごとの自由な国際競争」から、「国家資本主義ともいえる官民混合の国際競争」へシフトしていることである。ところで、国家を挙げたアジアのインフラ整備プロジェクトや、新エネルギーや環境関連ビジネス開発等による成長策に関わるには、前提として産業再編が必要となる。一業種一社に絞る韓国、上からの再編で国際競争力をつけるフランス・中国と戦うためにも、国内での産業再編は不可避である。ということは、群雄割拠型産業における企業再生においては、「再編なくして再生なし」といった色彩が強まってくることが予想される。
変質の第四は、「世界的規模でのサービスやソフト機能の高付加価値化」である。日本が強いとされていた伝統的ものづくりの付加価値が低下する一方で、弱いとされていた日本のサービス業のオペレーションの付加価値が高く評価されはじめている。再生過程におけるものづくりとオペレーションサービスの融合が、アジアでの競争力をもたらすかもしれない。
企業再生マネージャーよ、中国・アジア新興国に成長の種を見つけて回るべし。
今月の視点 グローバリゼーションの新潮流が、企業再生に新しい機会を生む
一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授 安田 隆二






