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総特集 農業の経営革新と金融機関の融資進出①

① 農業事業者の課題の現状と対策

 農業にとっての一番の問題は経営政策の不在である。その背景には農業を保護すべきものとした農業政策の基本概念がある。したがって農業における経営革新がなされるには、旧来の政策概念が払拭されることがまず重要である。本節ではこの点を指摘するとともに、我が国の今後の農業経営にとって必要な方向性を示す。

Ⅰ 課題の現状

1.政策論としての課題

 我が国の農業は産出額が減少し続け、担い手も減少し続けているが、最大の欠点は産業政策がなかったことであり、経営政策がなかったことである。我が国農政に「経営を意識した農政」が登場するのが92年である(図表1-1)。

 その後の展開は図表1-1に見られるごとくである。まず93年、「経営基盤強化促進法」の制定によって認定農業者制度を創設し、「日本農業法人協会」を結成するなど(96年)の制度整備が進められた。99年には、食料農業農村基本法に、「市場原理の浸透と、創意工夫する経営者の経営展開」によって「構造改革の推進」と「国際競争力の強化」(「需要に即した農業生産と、創意工夫する経営者の経営展開」)を目指すと謳った。

 その後、農業生産法人制度の規制緩和によって企業の農業参入が進められ(00年)、特定法人貸付制度等によって株式会社の参入が進められた(05年)。さらにリスクに見舞われる経営者のセーフティネットとして、「担い手経営安定新法」が整備された。経営政策への転換から、事業者のセーフティネット設立まで、この間実に15年の時間を要している。

 だが、経営政策の導入が図られたとは言っても、事はそう単純ではなかった。
農政には、旧来の農民保護政策への強い政治的郷愁が強く、それが経営政策と交差しつつ農政運営が行われているといってよい。そのため様々な規制緩和策も、抜本的というより抜け道的なものが多く、一連の経営政策の完成まで15年もかかっているのは典型例だろうし、そのセーフティネットも07年以降事実上反故にされるなどの事態が生じ、抜本的な経営の登場を展望する施策にほど遠い状況となっている。

 我が国の農政は、こうした従来型の政策フレームから早く脱却し、経営政策の本格的実施が図られなければならない。そのことが、後述する、企業の農業参入の制度的要件を急速に緩和させ、ひいては我が国農業の成長産業化が促されると考えるからである。


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