農業の経営革新では、最終的には「売る」ことを目的にした戦略が問われることになる。本稿ではこの「出口戦略」の具体的事例を二つ紹介する。
総特集 農業の経営革新と金融機関の融資進出⑤
⑤ 農業の出口戦略の具体例~事例に見る実務上の指針
Ⅰ 農業の出口戦略とは
1.胃袋のソウゾウ
当機構は、創意工夫と努力で経営の自立を目指すプロ農業者を「民の力」「民の知恵」で支援しようとの趣旨から、伊藤忠商事の丹羽会長(当時)らが発起人となって設立した民間NPOである。農業分野で各種サービスを提供している民間企業等172会員が在籍しており、経営改善提案、実行可能性調査、立案した計画のフォローアップといった「事業化支援」農産物販路開拓OJT(商談会出展サポート)、マッチングといった「農畜産物販売支援」、各種セミナー主催・講師派遣を行う「人材育成」等のサポートサービスを提供している。
設立して3年を経過し、相談受付件数は400件を超えているが、特に多いのが販売に関連した相談である。売ろうとしている農産物を、「誰が」「どういった局面で」消費しようとしているのか、明確な仮説を持っていない相談者も多い。
こうした相談内容は、突き詰めると、事業再生分野で一般に言われる「出口戦略」そのものということもできる。農業分野において「出口戦略」とは、その農産物をどうやって「胃袋」に収めるのかということにほかならない。
そこで本稿では、「農業分野における出口戦略」とは「胃袋をソウゾウする行為」であると定義する。ここでいうソウゾウとは、次の二つの意味を持つ。
①胃袋の「想像(Imagination)」…どこにその農産物を収める胃袋があるか、その胃袋に到達するには、どういったアプローチを取ったら届けることができるか
②胃袋の「創造(Creation)」…今食べていないヒト・局面(シーン)にどうやって食べさせるか。また、胃袋以外に農産物を消費する先(注1)はないか
本稿では、まず、この胃袋のソウゾウのための四つの着眼点について紹介する。その上で、一つ目は肉用牛農家の多角化、二つ目は野菜農家と民間企業との連携という二つの事例を紹介し、出口戦略を構築するアプローチをお示しする。前者は出口戦略を構築する上で「内製化」を前提としたケース、後者は「外製化」を前提としたケースとなっている。本稿を通じ、農業分野の出口戦略構築における実務の指針となれば幸いである。
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