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【Top Interview】りそな総合研究所株式会社 理事長川田憲治氏

Top Interview
りそな総合研究所株式会社 理事長川田憲治氏

【Top Interview】りそな総合研究所株式会社 理事長川田憲治氏
川田憲治(かわだ けんじ)
神奈川県出身。1972年(昭和47年)早稲田大学商学部卒、同年埼玉銀行入行。1999年あさひ銀行執行役員。2003年りそなホールディングス社長。2006年埼玉りそな銀行社長。2009年りそな総合研究所理事長。座右の銘は「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」。趣味は読書、ドライブ、映画・音楽鑑賞など。

経営者は、企業再生に対する想いや
その進捗状況を社員と共有すべし。
低迷企業の活性化こそ
日本経済の起爆剤になり得る

2003年5月、不良債権に苦しんでいたりそなホールディングスは2兆円の公的資金を申請し、事実上国有化となる。その5月にりそなホールディングスの再生を託され社長に就任したのが川田憲治氏である。

川田氏は、6月に再生請負人として会長に金融業未経験であるJR東日本副社長の細谷英二氏を迎え再生に向け動き出した。

りそなホールディングスは、川田氏が主導して策定した経営健全化計画により、2005年には計画どおりV字回復を果たした。

今の日本経済に必要なことは何か。経済の中心である銀行を再生させた川田氏にその見解を聞く。

国境を越えてライバルが出現する時代

――バブル崩壊後の日本経済の歩みは「失われた20年」と言われています。

川田 20年前の1990年の名目GDPは497兆円で、2009年のそれは474兆円。2010年予測も477兆円です。実質GDPは、1990年は489兆円、2009年は525兆円と年0.2%の伸びにとどまります。日本経済の規模は、20年前とほぼ変わっていないといえるでしょう。

 しかし、購買力平価ベースの日本のGDPは順調に拡大しています。1990年が2兆3,260億ドルだったのに対し、2009年は4兆1,520億ドルと、この20年間で8%伸びています。このようにシンプルなGDPと、グローバル経済環境を加味した購買力平価ベースのGDPの違いは、何から生じたものでしょうか。

 私は、環境適応して成長した企業と環境変化に対応できなかった企業、それぞれの経営者のビジネス視点の相違が潜んでいると考えます。

――確かに、日本経済が厳しい現在の事業環境下でも連続増収増益企業は存在します。

川田 21世紀に入ってからの経済のグローバリゼーションの中では、経営者は、企業経営を「地球儀の視点」で考察することが重要です。日経平均株価なら、外国人投資家本位のドル建ての推移も見る。円高の影響でドル建ての日経平均株価は、通常目にする円ベースよりも安定的に推移しています。

 家電量販店で中国人オーナーが誕生したように、たとえ内需型の産業でも、国境を越えてライバルが出現する時代です。毎日30分でもインターネットで世界の経済ニュースをチェックするようにしましょう。

 もう一つ大事なのは長めのスパンでビジネス環境の変化をとらえる姿勢。収益の前年対比のアップダウンにあまりとらわれず、中長期的な業績トレンドや自社の事業分野の増減の変化率を注視することです。 

 組織を率いる者として「次の一手」を考えたり、その「効果」を判定する習慣は大事です。しかし、マクロ経済の変動と企業経営を直接的に結びつけて一喜一憂することは企業経営者として危うい発想と言わざるを得ません。「地球儀の視点」に立ってグローバルレベルでビジネスチャンスを見出すためのマクロ経済分析に注力することは大切ですが、ビジネス現場の最高責任者である経営者は、自社の業績について環境を言い訳にできないポジションであることはしっかり認識しておくべきではないでしょうか。

 企業業績はすべて経営者の自己責任。経営者の言い訳ほど情けないものはありません。逆境こそ経営者の真価が問われるのです。

勤勉で知的な人材を駆使する起業家の多数輩出が不可欠

――日本経済の再生に必要なことは何ですか。

川田 求められているのは、再生ではなく「進化」でしょう。日本経済は現状でも世界に冠たる規模ですし、大企業から中堅・中小企業まで世界企業が数多く存在しています。

 そして何より、礼節を尊び勤勉で知的水準の高い人材を有している国です。この経営資源を駆使する起業家を多数輩出することが、日本経済の進化に不可欠なプロセスです。

 「市場」や「企業」を最大限活用するためにも、政府には、一層の規制緩和や税制改革などで、日本企業と海外企業を同じ土俵で競わせるような条件整備をする責任があります。

 経済発展の推進ビークルである企業の活性化も喫緊の課題。特に、業績が低迷中の企業が元気になれば、雇用が増え、税収が増し、社会が明るくなります。現在の日本の金融機関が抱える不良債権額は17兆1,220億円にも上り、融資額全体に占める比率は2.9%です(2009年3月期。金融庁「全国銀行及び共同組織金融機関の金融再生法開示債権額の合計」)。このように低
迷企業の活性化は、日本経済の進化に向けた起爆剤ともいえる、非常にインパクトある施策といえます。

 企業のライフサイクルは「起業」「成長・成熟」「再成長」「衰退」に分けられます。各ステージの企業の成長性それぞれにドライブをかける意味では、金融機関それも伝統的な商業銀行の役割に最新のファイナンス・テクノロジーを駆使して支援することがポイントでしょう。

経営者にカリスマ性は必要ない。共感を呼ぶくらい事業に惚れ込もう

――企業再生の要諦を教えてください。

川田 経営者は、まず自社を見つめ直すことから始めます。

 事業の大本を客観視すると同時に、自らが自社のデューデリジェンスを行います。B/SやP/Lのほか、人材、ブランド、固有技術など決算書にない経営資源を精査し、衰退あるいは低迷の原因をはっきりつかむ。この際、過去を慮るあまり、タブーをつくり思考停止に陥ることは厳に慎みます。

 次に、見極めた事業の本質や過失の経営の失敗から得た教訓をもとに再生計画を立てます。第一期が集中再生、第二期が成長のための基盤強化、そして第三期が大いなる飛躍です。

 計画実現のカギを握るのが、経営者の「夢」と「スピード」です。社員やステークホルダーと共有できる夢がなければ、たとえ基盤強化までは達成できても、最終ステージである飛躍はままならないと思います。事業再構築に伴う人員削減などの痛みを最小限に抑え、社内外の抵抗勢力の台頭を防ぐためにも、情熱をもってスピーディーに対処しましょう。

 りそなホールディングスの再生では、最初に「リテール金融のナンバーワンになる」という目標を掲げました。社員をはじめとしたすべてのステークホルダーの意識をこの一点に集中させた上で、賃金カットを伴う集中再生に挑戦。約2年後、ビジネスインフラがある程度整った段階で、私は社員の賃金を元の水準に戻しました。

「さあ、飛躍のステージに向うぞ! 」というメッセージを社内外に発したのです。

――再生をめざす経営者へのアドバイスをお願いします。

川田 今のような経済環境下では、企業再生は困難な業務です。その執行を担う経営者にとっては覚悟が問われる、しかし“丹田に力を入れて取り組む”やりがいのある仕事です。

 米国の経営学者ジェームズ・C・コリンズが著書『ビジョナリー・カンパニー』で指摘しているように、経営者にカリスマ性は必要ありません。大切なのはその事業への情熱とビジネスマインド。俗っぽい言い方をすれば、周囲の共感と協力を呼ぶほどその事業に惚れ込むのです。