事業再生ビジネスは、税務会計や金融等の知識や経験を有している者であれば容易に参入できるようになり、市場は着実に拡大してきた。一方で、事業構造を再構築して経営を軌道に乗せる実務家が、事業再生の現場から姿を消しつつある。TSKプランニング代表取締役・立川昭吾氏は、「2001年に公表された私的整理ガイドラインにより、税務会計や法律を中心とした事業再生が主流となりました。2003年に誕生した産業再生機構は、その象徴といえます」と語る。
事業再生ADR、民事再生法などは再生手法の一つであり、法律そのものでは利益を生み出す事業構造に転換することはできない。中小企業金融円滑化法の施行により、事業再生は金融調整に力を注ぐ方向に傾いた。プレーヤーの多くが弁護士になっている現状に、立川氏は危機感を強く持っている。
「"無"から"有"を生み出さなければ生き残れない」―― 立川氏
株式会社TSKプランニング
株式会社TSKプランニング
代表取締役 認定事業再生士(CTP)
立川 昭吾氏
実務家不在の現場に危機感
通貨オプション取引にも対応した体制
同社はグループ体制の構築を進めている。事業再編やM&AはTSK FAS、新規の業態開発はCIC。さらに今年3月には、税理士法人と弁護士法人を設立する。
「中小企業の後継者不足は、深刻な問題です。健全な経営をしている約287万社のうち、約80万社の社長が事業承継に悩んでいます。さらに社長の平均年齢は58歳。10年後の68歳で引退を希望しているのです」(立川氏)
後継者が現れなければ、事業承継にはM&Aが必然的に伴うことになる。また、のれん分けによる各店舗の独立経営は成功例が少なく、新しい選択肢が必要になってくる。
著しいグローバル経済の進展により、海外企業による国内企業の買収が目立ち始めてきた。2011年以降は、事業再生においてもインバウンドと共にアウトバウンドの案件が増えてくると予想している。各企業の事業再編のうねりが大きくなるだろう。
「事業再生だけでなく、事業承継、事業再編の3つを複合的に組み合わせたスキームを策定・実行します。単なる事業再生ではなく、企業そのものが生まれ変わるのです。これを我々は、“事業再新”と呼んでいます」(立川氏)
立川氏は、通貨オプション取引の損失による経営危機にも着目している。営業損益は多額の利益を計上にしているにも関わらず、経常損益は大幅な赤字に転落する企業が増えている。本業ではなく営業外活動における失敗が、企業の足元を揺さぶりはじめているのだ。
「当社では、為替デリバティブの損失を最小限に抑える方法をシュミレーションし、それをもとに経営全体を見ていきます。事業再生支援を本業とする企業では、唯一といっていいでしょう」と語る立川氏の眼差しは先を見すえている。
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経営者として地域再生を実践
事業再生から事業再新へと大きく舵を切り始めたTSKグループでは、新業態の開発に力を入れている。それを担うCICでは、地方都市のシャッター街と化した商店街の再生に挑戦している。まず、活気のなくなった商店街で顧客をどう集客するか。「商店街を利用している客を徹底的に分析しました。その結果、高齢者と中高生の利用率が高いのがわかりました」(立川氏)
顧客ターゲットを絞り、帽子とキャンドルを販売する店舗をオープンさせた。既存の商品やサービスでも、組み合わせによって時代のニーズを掴むことができる。平日にもかかわらず店舗には続々と客が訪れ、売上も順調に伸びている。この実験的な取組みが商店街全体を活性化させ、ひいては地域再生につながる。
これからは一企業だけでなく、地域をまるごと再生することが求められている。商店街の活性化は、その一例にすぎない。
立川氏が事業再生のプロを目指すきっかけは、いまから25年以上前に遡る。当時勤めていた東京重機工業株式会社(現株式会社ジューキ)の関連会社に出向して、社長を務めていた。だが、グループ体制の見直しをきっかけに清算することになり、会社整理を一手に引き受けることとなった。労使交渉や債務処理などの現場で、金融機関との交渉や法律の活用などを目の当たりにした。
その後、事業再生がビジネスとして注目される以前から数多くの企業を再建してきた。TSKプランニングは、1995年に設立。これまで、2,000社を倒産危機から事業再生へ導いた実績がある。
“Slow and Steady”が同社の事業体制に対する姿勢だ。人員整理や債務免除などで、一時的に業績を回復しても、再び経営危機に陥る可能性が高い。確実に収益を稼ぐビジネスモデルを構築して企業を立て直すには、相当の時間を要するのである。損益計算書(P/L)の質を高めていくことが早急に求められている。「“無”から“有”を生み出すのが事業再生です。自ら経営者として実践し成功だけでなく失敗も重ねることで、生きた事業再生のノウハウが蓄積できます」と話す立川氏には、説得力と迫力が感じられた。
株式会社TSKプランニング
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